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土居珈琲ライブラリー > > 焙煎釜から出た直後の香り、そのままに。

焙煎釜から出た直後の香り、そのままに。  いよいよ2013年最後のニュースレターとなりました。一年の月日がたつのは早いものです。今年も一年、会員の皆様にはご愛顧いただき、本当にありがとうございました。一年を締めくくる内容として、少し昔の話をさせていただきたいと思います。

 まだ、コーヒーを全国の会員の方にお届けするという活動を始めた当初の頃、困った事件が起こりました。その困った事件とは、会員さまにお届けしたコーヒーの袋が到着時に口が開いていたというものでした。

 「箱を開けると、コーヒーの袋の口が開いていて、コーヒー豆が袋から飛び出してしまっていた」。 会員さまからは、そのようにご連絡いただくことがありました。

 「う?ん、困った」

 何故かというと、これは袋の強度が弱い為に起こっていた事件ではないからです。
 そうなる原因というのは、輸送途中のコーヒーの粉が、会員さまのお手元に到着するまでの間パンパンに膨らみ、コーヒーの袋が破裂してしまっていたからなのです。

なぜ、コーヒーの袋が破裂してしまうのか?  焙煎釜から出来上がった直後のコーヒーを、コーヒー袋にいれて包装します。包装した直後のコーヒーの袋は、まだ膨らんでいません。しかし発送して会員の方のお手元に到着する1日から2日の間に袋がパンパンに膨らみそして、袋が内部の炭酸ガスの圧力に耐え切れず破裂してしまっていたというわけです。これはお届けするコーヒーの、「焙煎の鮮度」を高めた為です。前号でもお話したとおり、焙煎鮮度の新しいコーヒーは豆の内部より炭酸ガスを放出しています。そしてこの豆の内部より放出される炭酸ガスこそが、コーヒーの「香り」なのです。

 その香りは、会員の方より次のような声をいただくことがあります。「コーヒーの箱が届いた時点で、コーヒーのいい香りが強くたちこめているので土居さんからの荷物であるということが、すぐにわかります」。それだけ、強くコーヒーの香りを感じていただけるのは、あのコーヒー独特の「香り」が、息を吐き出すようにコーヒー豆の内部から放たれているからなのです。

 焙煎してから日にちを経過させてしまえば、このような事態は起こらないのですがそれでは、土居珈琲のコーヒーではなくなってしまいます。

“土居珈琲”である為に  もちろん、焙煎の鮮度を高めると、豆の内部より炭酸ガスが放出されるということはある程度、予測はしていました。しかし、放たれる炭酸ガスの量が、たった一日で袋を破裂させてしまうほどの量となるということが、この当時は経験量が少なく、想定できていませんでした。

 当時、コーヒー豆を入れる袋が破裂する可能性も否定できないため、袋に炭酸ガスを逃がすための小さな穴を開けることも検討していました。それでも、やはりコーヒーの「保存」のことを考えるとコーヒーの袋に小さな穴をあけることは、あまりしたくなかったのです。それはコーヒーというものが、「空気」、「光」、「水」分に触れることで、その成分を劣化させていくからです。

 つまり、コーヒーの風味を長く持たせようと考えると、この3つにできるだけ触れさせないようにすることが重要となってきます。その為、輸送している間のコーヒーを入れる袋は、できるだけ密閉性の高いものが望ましいのですが袋の密閉性を高めれば高めるほど、コーヒー豆の内部から放出される炭酸ガスの逃げ場がなくなり、結果、袋を破裂させてしまいます。「あちらを立てれば、こちらが立たず」という言葉が当時のわたしの頭にかけめぐりました。

 この状況を変えたのは、やはり技術の進化です。昔と変わって、コーヒーの袋も研究が進み、現在ではコーヒーの外部の空気は袋の中に通さず袋の内部の空気を逃がすという加工ができるようになりました。この加工ができた為、今は焙煎の鮮度を高めたコーヒーを、お送りしても袋が破裂してしまっているという状態はなくなったのです。
そうして、コーヒーの袋をよりいいものは出来ないかということを袋会社の開発の方とやりとりしながら、改善を重ねてきました。

 その中で袋会社の開発の方より、よく言われる言葉があります。「コーヒーというものは、内容物の特性から考えたとき、袋屋泣かせの商品なんです」開発の方が、そう言いたい気持は、とてもよくわかります。
それは、銘柄によって、ことさら多くの「炭酸ガス(香り)」を放出して袋を破裂させる可能性が高いものもあるのというのに、コーヒー会社の人間からは「袋の密閉性は、より高めろ」という矛盾したことを要求されるのですから。

 「銘柄の持つ香りを、焙煎釜から出た直後の強さ、そのままに楽しんでいただく」。単純なことですが、その目的のためには、ひとつだけでなくたくさんの条件を積み重ねていく必要が生じてきます。

 「神、細部に宿る」

コーヒーを扱っていると、改めてこの言葉に気付かされることがたくさんあります。