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「安定した焙煎度合い」を作るために

見極めるタイミングは、ほんの一瞬。  コーヒーは生豆を焙煎することで、はじめてコーヒーとして楽しめます。焙煎士はその生豆を焙煎することで、その銘柄がもつ持ち味を引き出し、味を作り出していきます。
 コーヒー焙煎において重要な事は、味を安定させるということです。焙煎するたびに焙煎度合いが異なり、味が違うということではいけない。そのため、わたしが焙煎をはじめた当初は、焙煎度合いを安定させるために、タイマーで焙煎時間をはかるということを、よくしました。そして、その時間をノートに記録していく。そのときと同じ火力をもって、同じ焙煎時間で焙煎すれば、いつでもベストな焙煎度合いに仕上がる、というわけです。
 しかし、記したデータの数値を見ながら、ある時期、時間をはかることをやめました。その理由はカンタンです。計算どおりに進まなかったからです。考えてみれば当然のことです。まず同じ農園の生豆であっても、状態は一定ではありません。また、焙煎釜の温度も、夏は冬のときと比べると、温度の上昇時間は、はやくなる。
 生豆の状態も、焙煎釜の状態も変化するものですから、時間と火力を一定にしても、同じ焙煎度合いに仕上がるわけがありません。わかりやすいものに目をとらわれて、ほんとうに見なければならないことを見逃していたのです。


 ほんとうに見なければならないこととは、「目に見えないこと」です。「目に見えないこと」とは、焙煎時に豆から発するかすかな音や、焙煎釜のモータ音。また釜の温度が上がっていくことで肌に伝わる温度などです。生豆を焙煎して、ベストな焙煎度合いに仕上げるということは、そのときそのときの変化する状況を見極め、その状況に臨機応変に対応していかなければなりません。
 目の前におこることに対応しながら、変化させることで、はじめてコーヒーは「安定した焙煎度合い」に仕上がる、というわけです。