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旅の中のコーヒー(ヨルダン編)

学生のときのこと。近くの映画館にブルース・リーの映画を見に行きました。それと同時にやっていた、映画がありました。「アラビアのロレンス」です。映画の中で、アラビア半島への派遣が決まったロレンスに英国の上官が言います。「砂漠を楽しむことができるのは、神とベドウィンだけだ」。

「大人になったら、自分も主人公のように砂漠を楽しみながら、コーヒーを飲みたい」。

こうした子どもの頃にうけた衝動は、おさえられないものですね。そんな理由から、わたしは、砂漠がある国を旅の目的地に選ぶことが、多くなりました。そして、今回の旅に選んだ国が、ヨルダンです。

ヨルダンと聞くとテロや革命軍といった、ぶっそうなイメージを持っていましたが、実際に空港につくと、その考えは、くつがえされました。治安は実に良好。ヨルダンは中東のリゾートとして知名度が高いのですが、見えるものすべてが、その言葉にぴったりでした。

なんといってもすばらしいのは、ペトラ遺跡に代表される古代の建造物です。


それらの遺跡を見たあと、旅の目的である砂漠に、足を踏み入れました。あたり一面ひろがる景色は、山と砂だけ。その景色は、SF映画で見た遠い惑星のようでした。まわりを見わたしても、人工的な建物はまったく見ることはありません。それどころか、まわりには、人かげもありません。

砂漠の強烈な日ざしをさけるため、岩陰に入り、一休み。休んでいるあいだ、コーヒーをたてることにします。たてかたは、いつものフィルター式ではなく、専用の鍋にコーヒーの粉を入れて煮たてる中東式。

旅にでると、いつも感じるのは強い“孤独感”です。すばらしい景色を見ても、そのすばらしさを話しする人も、となりにはいない。日常では感じることがない、そうした強い孤独を感じることこそ、旅の醍醐味だと思うのです。

その孤独感をいやすように、自分のためだけに、じっくりと時間をかけてコーヒーをたてて、その一杯を口にする。


むかし、砂漠を旅していたベトウィンたちも、この旅の孤独を感じながら、一杯のコーヒーの味にいやされていたに違いありません。この一杯の味わい、至高と言わずに、何と言うのか。

ヨルダンの砂漠で楽しむコーヒーは、あらためて、その魅力の深さをわたしに教えてくれたのでした。