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「売れるから買うんやない。自分が良いと思った銘柄を、買い付けるんや」。



先日、15年以上お付き合いいただいているお客さまと、お話しをする機会がありました。15年前の話をお聞きしながら、当時、父と大ゲンカしたことを思い出しました。

ケンカの理由は、父である土居博司が、わたしになんの相談もなく、ある銘柄を買い付けたことが発端でした。その銘柄の名前は、「グァテマラ オリフラマー農園」でした。この銘柄、当時のわたしからすれば、考えられないほど高価な買い付け価格であったからです。

どれだけわたしが言っても、父は、「良い銘柄だと考えたから、買い付けたんや。なにが悪い」と言ってゆずりません。「たいした品質でもない豆を、ぐちゃぐちゃ言葉多く使って売るようなマネはせんでもええ。自分が本当に自信を持てる銘柄を扱うから、飲む人はわかってくれるんや」と言うのです。

15年前のわたしが思ったことは、「飲む人は、『グァテマラ オリフラマー農園』なんて言う名前を知っているはずもないのだから、そんなことあってたまるか』というものでした。当時は、まだ品質の高いコーヒーを求めるという動きは、今ほど大きくなかったからです。そもそも、品質の違いがコーヒーにはあるということをご存知の方が、少数でしたから。

こうしたわたしの考えは、みごとにくつがえされました。「グァテマラ オリフラマー農園」をご注文いただいたお客さまから、何度も繰り返しご注文をいただいたのです。まったく知名度のなかった「グァテマラ オリフラマー農園」は、一年を通して、お客さま人気第一位の銘柄となりました。

その結果、予想よりも、はるかに早く、「グァテマラ オリフラマー農園」は、買い付けた量がなくなりました。そうすると、追加の買い付けをしなければなりません。しかし、父は、今度はその時に届いたサンプルロットを見て、買い付けないと言うのです。

当時のお客さまに「グァテマラ オリフラマー農園」の名前を知っていただいていたので、「そんなこと言ってないで、追加分、買い付けてよ」というのが、わたしの正直な気持ちでした。

しかし、父はがんとして譲りません。「(オリフラマー農園のオーナーだった)母親は、しっかりした人だったのに、息子が悪いんや。母親が亡くなってから、遊ぶことばっかり覚えて。現場に行って管理をきちんとしてないことが、生豆を見たらよくわかる。おまえも、そうならんように、気をつけろよ」。

そういう父に対して、わたしはこう言いました。
「そうは言うけど、オリフラマー農園を仕入れてほしいと言っているお客さまは、多くいるよ」。

父の返事は、こうでした。
「売れるから買うんやない。自分が良いと思った銘柄を、買い付けるんや」。

その考えのもと、父が次に探し出し買い付けた銘柄は、「グァテマラ カペティロ農園」という銘柄でした。この銘柄も、お客さまにご紹介した結果、同じようにお客さまより、繰り返しご注文をいただけることとなりました。今、土居珈琲の年間人気第一位の銘柄です。そして、このカペティロ農園は、品質の高い銘柄を作り続けてくれて、今年度も、全生産量のなかから、「レッドブルボン種」ロットという最高峰のものを買い付けました。

15年前の父の言葉は、わたしに、どのようなことを考えて、コーヒー豆を買い付けるべきなのかということを、根本からじっくり考えさせてくれる機会となりました。

ただ、当時は感情が先立ち、父親にどうしても、この言葉を言うことができませんでした。

「おやじ、さすがだね」。