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「そうやって作ったコーヒーは、土居珈琲のコーヒーではない」

おかげさまで、ほんとうに多くのお客さまより、ご愛顧いただけるようになりました。

一般のお客さまに対してコーヒーを直接お送りする。はじめた当初は、この形がコーヒーを飲む方にご理解いただけるか、正直のところ疑問に思ったものです。当時は、コーヒーに品質を求めるという動き自体、それほど存在していませんでしたから。

月日が流れ、いま多くのお客さまより、長くご愛顧いただくことで、コーヒー農園とも「信頼」を基盤とした取引ができるようになりました。やはり、一定数以上の生豆を買い付けることができなければ、コーヒー農園も、真剣には相手にしてくれないという現実があります。品質の高い銘柄を買い付けるために、このことは欠かすことができません。

では、単純にたくさんの量を扱えれば、品質の高いコーヒーになるのかというと、そうではありません。コーヒーには「焙煎」という条件があるからです。

言うまでもありませんが、コーヒーは輸入した生豆を、焙煎釜を使って焙煎しなければなりません。コーヒーができあがるまでには、一回の焙煎で約20分ほどの時間がかかります。ですから、使用している焙煎釜の規模で、一日に作り出すことができるコーヒーの量は決まってきます。

焙煎中の豆の焼き加減を見ながら、仕上げるタイミングをはかっていきます。

土居珈琲では、焙煎釜を6台ほど採用しています。それらはすべて、1kgから12kgまでの、小規模な焙煎釜です。こうした「小さな焙煎釜」でなければ、一回一回の焙煎に対して、自分の感覚における調整ができないからです。

コーヒーは同じ農園で収穫されたものでも、収穫年度やエリアの違いによって、差異があります。その銘柄の持ち味を引き出すために、その差異に合わせて焙煎の火加減や時間を調整しなければなりません。

ただ、世の中には、いろいろな業態の仕事があるもので、この焙煎を請け負ってくれる会社があります。コーヒーは昔から「大量生産」を前提に考えられていました。自分たちが作ることができる以上のコーヒーの受注を受けたとき、こうした焙煎を請け負ってくれる会社に依頼すれば、多くの量のコーヒーを作り出すことが可能となります。

この焙煎業者の方が、ある日当社に来社し、こう言いました。

「毎日これだけ細かく焙煎していたら大変でしょう。もし、土居さんのところで焙煎できないようであれば、わたくしどもにおまかせください。」

焙煎にこだわり続ける。土居珈琲の工房における大切な考え方です。

その話を受けて、土居博司はこう答えました。

「気持ちはありがたいですが、そうやって作ってもらったコーヒーは、土居珈琲のコーヒーではありません。わたしの目の黒いうちは、自分たちの目の届く範囲のなか、細部にまでこだわってコーヒーを作っていきたいので。」

土居珈琲は、一日に受けるご注文数に制限をかけています。お客さまにはご迷惑をおかけすることかもしれません。しかし、それは「自分たちの手で作り出すコーヒーこそが、土居珈琲のコーヒーである」という土居博司の信念にもとづいているからです。