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旅の中のコーヒー(ドバイ編)

国によって、コーヒーの楽しみ方はちがいます。

いまは、すっかり海外に行けなくなりましたが、以前、ドバイへ出張に行ったときのこと。ぼくは、ショッピングモールのなかの、一軒のカフェに目をひかれました。

モールのなかは、さまざまな人種の人たちが行き交っているのに、そのカフェにはアラブ系の人たちだけしかいなかったからです。

ぼくは、興味がわいて入店することにしました。ただ、メニューを渡されたもののアラビア語で書かれていて読めない。

そこで「あちらのテーブルに出ているものと同じものを」とお願いしました。

注文後、テーブルに運ばれてきたのは、透明のガラスポッドに入ったコーヒーでした。それは「アラビックコーヒー」とよばれるものです。

コーヒーの粉をお湯で煮詰めて、最後に「カルダモン」というスパイスを入れてたてられます。

香辛料の香りが加わったそのコーヒーの味の感想を、正直いうと「あまり美味しくない」。

そのように思ってしまったのは、ぼくがコーヒーにおいては、「素材の持ち味を生かしたい」という考えをもっているからです。香辛料など別の香りを、コーヒーに加えたくないのです。

ただ、当然ながら、ぼくの考えが、すべて正しいわけではありません。

「食」は文化につながります。

たとえば、日本人にとっては米や梅干しがソウルフードです。同じように、アラブの人たちにとって、香辛料を加えた「アラビックコーヒー」は大切なソウルフードであり、なにより大切な味なのです。

わたしが訪れたカフェは、「アラビックコーヒー」をはじめとしたアラビア系ソウルフード専門店でした。ですから、アラブ系の方たちでにぎわっていたというわけです。

「コーヒーには、なにも足したくない」とはいうものの、アラビックコーヒーを飲んでいる彼らの姿を見ていると、「今回、仕入れた銘柄を浅煎りに仕上げて、香辛料を加えてみたら、新たな魅力が見つかるかも…」とも思いました。

そのようなことを考えていると、レジのほうで、現地の若者2人が伝票を取り合いながら、言い争う声が聞こえてきました。

「前回は君が出してくれたじゃないか。今回は、ぼくが払う番だ」

「いやいや、誘ったのは、わたしのほうだから、わたしが払うよ」

「だめだよ。いつも君ばかり出しているじゃないか」

「いいんだ。いいんだ。気にするな。また今度、払ってくれればいいさ」

コーヒーの楽しみ方はちがうけど、レジの前で繰り広げられる会話のやりとりは、日本もドバイも変わらない。意外な文化のつながりも感じてしまいました。