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焙煎度合いを変えることで、コーヒーの味は変わります。

今から20年ほど前、土居珈琲では、ご注文いただくコーヒー豆の焙煎度合いは浅煎りから深煎りまで、お客さまにご指定いただけるようにしよう。そう考えていました。そうすることで生まれる味の違いを、楽しんでいただきたかったからです。

しかし、珈琲工房でそれをやってみたところ、もった感想は、「なかなか難しい」というものでした。従来の「コーヒーの常識」は、コーヒー焙煎とは自社ブレンドを作り、それを同じ焙煎度合いに仕上げていくというものです。

ですから、異なる銘柄をその時その時で、浅煎りや深煎りで仕上げていくということは正直やったことがありませんでした。これは、言葉以上に難しかったのを思い出します。当時、父と一緒にかなり試行錯誤しました。

これをするためには、焙煎釜も一台だけでは間に合いません。小さな焙煎釜を数台用意する必要がでてきました。土居珈琲の珈琲工房は、小さな焙煎釜が並ぶ独特のものです。こうした釜の配置は当時、父と試行錯誤しながら考え出したものです。

“小さな焙煎釜”を数台並べた釜の配置は、土居博司と試行錯誤して生まれたものです

ただ、父はどの銘柄でも、さまざまな焙煎度合いで仕上げる技術はもっていました。創業当初から、銘柄を買い付けるときは、ひとつの焙煎度合いの味だけで判断するのではなく、さまざまな焙煎度合いで仕上げ、それぞれの味を鑑定してから判断していたからです。

しかし、父はわたしに、こう言いました。
「ご希望をお聞きする焙煎度合いには、制限をかけるように」。
彼がわたしにこう言ったのは、理由があります。

深煎りにして、苦味をいかすことで持ち味がいきる銘柄もあれば、浅煎りで仕上げて、酸味と甘味をいかすことで、その魅力がひかる銘柄もあるからです。逆にいうと、その銘柄に合っていない焙煎度合いで仕上げることは、その持ち味を消してしまうことになります。

例えば、「ブルーマウンテン」は、浅煎りで仕上げることで、その持ち味がいきる銘柄です。これをフレンチローストやイタリアンローストといった深煎りで仕上げることは、できなくはありません。しかしそれは、ブルーマウンテンの持ち味を消してしまうことです。

「技術的にできるとしても、自分が自信をもてない味のコーヒーをお客さまにお届けしたくない」。
父は、こう言うわけです。

さまざまな焙煎度合いで仕上げる技術を、父 土居博司は珈琲工房のなかで確立させていきました

豆の色合いを見て、豆から発する音を聞き分けながら、最適な焙煎度合いを見極めることに、技術のキモがあります

こうした背景から、土居珈琲では制限をかけたうえで各銘柄において、ご希望の焙煎度合いをお聞きするようにしています。正直、手間は相当かかります。またこれをやっている以上、大量のコーヒーはお作りできません。土居珈琲が一日焙煎するコーヒーの量に制限をかけさせていただいているのは、こうした理由からです。

ですから、土居珈琲は手間をかけ時間をかけて、試行錯誤しながらコーヒーを焙煎していきたいのです。こうしたことを重ねることで、土居珈琲の焙煎技術は確立してきたからです。たしかに技術的に難易度も上がりますし、身に付けるまでには時間もかかります。

しかし、父 土居博司と築いたこの焙煎技術は、珈琲工房のなかで残し続けていきたいのです。