コーヒーにおいて、生豆の品質の重要性はよく語られます。
『焙煎釜』という条件は、その生豆と同じくらい味に影響すると、わたしは考えています。
同じ豆でも、ちがう焙煎釜で焙煎したら味は変わります。
焙煎釜の性能が大きくものをいうというわけです。
性能を語るうえで、特にわたしたちが重視しているのは、釜の“鍛えられ方”です。
長い時間、使いこまれ、手入れされた焙煎釜ほど性能が高くなる。
わたしたちは、そう考えています。
たんねんに手入れされながら、長く使いこまれた大工道具のほうが、性能が良いのと同じです。
わたしたちは、40年以上コーヒーをつくることだけに特化してきたため、ほとんど一日中、釜を動かしてきました。
その結果、気がつけばわたしたちの釜は道具として、かなり鍛えられたものとなっていました。
土居珈琲のコーヒーは、「さっぱりした味わい」と言われています。
それは、長い年月をとおして鍛えられた焙煎釜。
そして、積み重ねることによって生まれた技術。
このふたつの条件がそろって、はじめて作り出せるものです。
土居珈琲の行動基準書に、
「土居博司が残した焙煎釜を守りつづける」
という一文があるのは、こうした理由があるからです。