イタリアに行ってきました。アメリカに次ぐコーヒー消費国。
コーヒーのトレンドの多くは、この国から発せられます。
名店と言われるいくつかの店を回り、刺激を受けてきましたが、
すべてに満足というわけではありませんでした。
味が劣っているのではありません。文化のちがいによります。
イタリアのコーヒーのほとんどは、エスプレッソ抽出によるものです。
エスプレッソ抽出はミルクを入れて楽しむことが前提。
ですので、苦みを重視した濃い味づくりをします。
このため、焙煎も黒色に近い深煎りに仕上げます。
世界的に見ると、日本のようにドリップで抽出する方法は少数です。
ですから、多くの産地では、エスプレッソ抽出を前提にコーヒー豆をつくります。
しかし、わたしどもがたいせつにしたいのは、
“素材の甘み”と“カップのきれいさ”です。
このことがあるため、イタリアで高く評価された銘柄であっても、
わたしどもには合わないということがよくあります。
“素材の甘み”は、収穫されたコーヒーの実の熟度が高いことで生まれます。
“カップのきれいさ”は、不良豆が混じってないかで決まります。
ただ、ほんとうに自分たちが表現したい味をつくれるようになったのは
近年になってからです。
20年ほど前は、まだまだ「量」をつくることが中心と考えられていたので、
自分が求める豆をつくる生産者と出会うことはたいへんむずかしいことでした。
あらためて自分が理想とする味をつくれるようになったのは、
優れた技術はもちつつも、効率を重視しないという
ちょっと変わった生産者たちとの縁が増えたからです。
焙煎しているものとして、なによりもうれしいことです。
「本年度はかなり自信作。おまえが希望する味わいがつくれると思う」
2025年5月の『手と手』のテーマを“甘み”としたのは、
グァテマラ ラスヌベス農園からの上記の連絡が来たことだったのを、
イタリアでエスプレッソを飲みながら思い出しました。