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この味は、かならず伝わるものと確信しています。

おいしいコーヒーを作る。
そのための手法のひとつに、“不良豆を取り除く”ということがあります。

どれほど素晴らしい農園からの銘柄であっても、必ず不良豆は混在します。コーヒーが農作物である以上、それはしかたがないことです。

ただ問題は、そうした不良豆が、コーヒーの味を落とす大きな原因になってしまうということです。そうであるなら、それを取り除けばいいわけですが、この不良豆の選別は、言葉で言うほどカンタンなことではありません。不良豆の選別は、人間にしかできないからです。

たとえば、黒いものの中から白いものを取り除くということであれば、話はカンタンです。そうしたことは、機械のほうが向いているのかもしれません。

しかし、不良豆といっても、見た目の違いはほとんどありません。
そうした不良豆のなかでも、「貝殻豆」というものは、とくにやっかいです。「貝殻豆」とは、読んで字のごとく、豆の中身がなく、貝殻のような形をしているものです。この貝殻豆がなぜやっかいなのかというと、生豆の状態のときには、わからないからです。

この「貝殻豆」、生豆のときは正常な生豆を包みこむような形をしています。ですから、通常の生豆と区別がつきません。これを焙煎したときに、熱と衝撃で、正常な豆と分離して、はじめてその姿をあらわすのです。

この貝殻豆がなぜ不良豆になるのかというと、正常な豆と比べて、豆の厚みが薄いからです。コーヒー焙煎とは、熱を豆の外部から芯まで均等に熱を加えることです。ですが、貝殻豆の場合、どうしても、豆の厚みが薄いところに、焙煎の熱が強く当たってしまう。

この貝殻豆を取り除かなくてもいいという選択も可能です。貝殻豆といっても、決して飲めないわけではありません。品質の高い銘柄ですから、量販用のそれと比べたら、品質はことさら高いです。

しかし、わたしたちはこの貝殻豆を取り除きます。

人間の目で一粒一粒確認しながら、貝殻豆を選別していきます

「コーヒーを作ることにおいて、迷うことがあったら、どちらのほうが手間がかかるかを自分に問え。そして土居珈琲の珈琲工房では、手間のかかるほうを選択しろ」。
昨年亡くなった当社の焙煎士 土居博司は、『技術書』のなかで、こう書き残しているからです。

この貝殻豆を取り除くことですが、なにかラクに取り除く方法があるというわけではありません。スタッフ全員で、力を合わせて一粒一粒、焙煎した後の豆を目で確認しながら、貝殻豆を取り除いていくのです。

今回の銘柄も、その味に惚れて買い付けたのですが、貝殻豆が多く存在しました。その味をより研ぎ澄ませるため、そして、初代創業者 土居博司の教えを守り続けるため、わたしたちは多くの時間と手間をかけて、この貝殻豆を取り除きます。

むかし工房に訪れた同業の方から、こう言われたことがあります。
「こんな手間のかかることやっても、飲む人にはわからんぞ」。
はたしてそうでしょうか?お客さまからいただく声や直接お会いしたお客さまからお聞かせいただくお話から、わたしはそんなことはないと思っています。

わたしたちが時間と手間をかけて作り出すこの「味」は、かならず土居珈琲のお客さまには伝わっている。わたしはそう確信しています。