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旅の中のコーヒー(シンガポール編)

先日、シンガポールへ行ってきました。

シンガポールは、アジアでもっとも経済が伸びている国であり、同時にショッピング天国でもあります。世界中のブランドショップが、代表的な建造物「マリーナベイ・サンズ」のなかに、数多く軒を並べていました。

ただ、ものすごい数のブランドショップが並ぶ風景を見て、ぼくはこう思ってしまいました。

「どの店も同じに見える」。

たしかに、どのショップも大きなお金をかけて、立派な店を展開しています。最新のトレンドを取り入れた店構えになっています。

しかし、ぼくには、「こういうふうにしていれば、はずれがないだろう」と言われている気がしてしまったのです。それは、ぼくが今のコーヒーの産地の現状に抱く思いと、同じものを感じたからかもしれません。

一昔前、コーヒー農園では、その土地独自の農法が存在していました。異なる国の農園から見える風景は、どこも刺激にあふれていました。

しかし近年、どこの農園に行っても、同じような景色ばかりを目にするようになりました。情報が手に入りやすくなったため、ある農法で作ったコーヒーが売れるとわかったら、すぐにその農法を取り入れるからです。

それを見ると、「コーヒーが好きだから作っている」より、「売れるが勝ち」みたいな流れが主流になっているような気がするのです。その結果、その土地でしか生みだせない強い個性をもった銘柄は、どんどん少なくなってきています。

全体的に、これからも各国のコーヒー農園から作り出される銘柄の味わいにおいて、無難なものが増えていくことは間違いないと思います。

ならば、わたしたちは、その逆の方向に向かって作り出されたコーヒーを買い付けていこう。

シンガポールに行って、そんなことを強く思いました。