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珈琲工房でも女性スタッフ、奮闘中です。

先日封切られた映画「カンパイ!」を観ました。

かつて酒造りの現場は女人禁制といわれており、女性がそれに関わることは許されていませんでした。「カンパイ!」は、そのような歴史をもつ酒造業界のなかで奮闘する女性たちの姿を描いた作品です。

コーヒー造りも、酒造り同様、女性が焙煎の現場に入ることは、どこかタブー視されていたように思います。そのようななか近年になって、「コーヒー焙煎をしたい」と希望する女性が現れるようになりました。ただ、珈琲工房スタッフの募集に女性が応募してきた当初は、正直戸惑いを感じました。

父 土居博司に、このことを相談したとき、彼はこう言いました。
「女性のほうが、ものごとの当たり方が丁寧やから、男より焙煎、上手(うま)くなるかもしれんぞ」。

そうした父の考えがあったことから、女性も希望があれば、珈琲製造部に採用するようにしました。それから10年が経過した今、珈琲工房のなかで女性スタッフが働く姿は、めずらしいものではなくなりました。

しかし、彼女たちがいつも楽しく仕事ができているかというと、そんなことはありません。珈琲製造部の仕事は、彼女たちにとって「壁」となることが数多くあるからです。

たとえば、生豆の重さです。生豆の入った麻袋は60kg以上の重さがあります。現場では、男性と同じようにそれを運んだり持ち上げたりしなければなりません。

また、焙煎釜のメンテナンスも四苦八苦するようです。メンテナンスにおいては、ベアリングなどの消耗部品の交換があります。それを行う上では、ボルトひとつしめるにしても、バランスを考えながら行わなければなりません。その勘所(かんどころ)を彼女たちは、なかなかつかめないようです。

珈琲製造部で行う、「ハンドピック」のひとこま

それらのことをどうするかと考えながら、彼女たちの仕事ぶりを見ていたときのこと。彼女たちが「ハンドピック」に、より時間がかかっていることに気付きました。その理由は、技術が低いからではありません。男性よりも、より丁寧に、不良豆を取り除いていたからです。

このことは効率だけを考えたら、間違いと言われるかもしれません。しかし、彼女たちが「ハンドピック」した豆は、時間をかけた分だけ、より研ぎ澄まされた味わいのものに仕上がっていたのです。そうした彼女たちの仕事があって、当社の「ハンドピック」は、より厳しい基準がもうけられるようになりました。

そこで生まれる差は、飲む方に伝わらないほど小さいものかもしません。ただ、そこまで、きめ細かく丁寧にハンドピックできるのは、細部にこだわる女性の感性ならではでしょう。男性には、なかなかできないことです。

日本酒は、女性の感性が加わることで、新たな魅力が発見されました。

酒造の現場で起きたことが、珈琲製造の現場で起こっても不思議ではないはずです。彼女たちがもつ感性が、土居珈琲のコーヒー造りに加わることで、他にどのような新しい“なにか”が生まれるか。

悩みの数だけ、楽しみに感じることもあるものです。