先日、あるお客さまとお話させていただく機会がありました。
「届けてくれる豆が、いつもほんとうにきれい。
それがとてもうれしい。」
そのときいただいたこの言葉に、むくわれた気がしました。
わたしどもが買い付けている生豆は、生産されたなかでも、
品質にこだわってつくられたトップ数%のものです。
ただ、そういうものであっても、欠け豆や貝がら豆とよばれる
不良豆が含まれます。
ですから、わたしどもは独自の基準を設け、
豆の形がそれに満たないのであればとりのぞいています。
この不良豆をとりのぞく作業を「ハンドピック」と呼んでいます。
不良豆と言っても、一般のものと比べれば高いレベルにあるものです。
コストを考えれば、とりのぞくなんてことはまずしません。
しかも、時間と手間もかかります。
わたしどもが一日につくるコーヒーの量に制限をかけているのは、
この「ハンドピック」を徹底するからでもあります。
追い求めるのは効率や量ではない。
自分たちが「本物」と考えるコーヒーづくりを、
妥協することなくおこなうことに、こだわりつづけると決めたから
わたしどもは「ハンドピック」を、創業から40年以上つづけてきました。
そのような考えでコーヒーづくりをしているなか、
20年以上ご愛顧いただいているお客さまに、
どうして当社のコーヒーをご愛顧いただいているのかを聞いたとき、
いただいたのが、冒頭の言葉でした。
「ハンドピック」は、日が当たらない地味な作業です。
おこなうスタッフは、忍耐力が求められます。
工房にもどり、お客さまからいただいたお話を
「ハンドピック」をしている若いスタッフに伝えました。
そのとき、うれしそうな表情をうかべる彼の顔から、
明るい光が放たれたような気がしました。